慶應鶏肋録

めし、フロ、慶應通信の勉強(卒論)、ついでの雑用とか

a200 わたしの読書ノート

『テンペスト』を読んでいく

地元で一緒に戯曲を読む会をやっている演出家の女史から、 「もしわたしが演出するのなら、どの作品がいいですか?」 と訊かれたので、即座に『マクベス』と返答した。 『マクベス』を選んだのは彼女の演出の特質を考えてのことではなく、単にわたしが好きな…

春を恨んだりしない

池澤夏樹『春を恨んだりはしない 震災をめぐって考えたこと』(中公文庫)のタイトルを一瞥して、なんと厳しい言葉かと思った記憶がある。 震災後のわずか半年後に、思索エッセイとはいえこの表題を世に出すのにはそれ相応の勇気と準備が必要だったろう。 そ…

『零戦』で、堀越二郎が感じた「美しさ」の罪とは

ご存知のように、この映画の主人公である堀越二郎は実在の人物で、(三菱重工の)航空機の設計士でした。零戦を設計したのは彼ですね。 その彼が戦後に書いた零戦開発エピソードが、『零戦 その誕生と栄光の記録』(角川文庫)です。初版は戦後20数年して書…

【芥川賞直木賞予想 #158-5】第158回芥川賞直木賞を予想します

いよいよ明晩1/16、芥川賞直木賞の銓衡会が開かれて、両賞が決定する。 わたしは、次のように予想してみた。 ■芥川賞 前田司郎「愛が挟み撃ち」 ※ダブル受賞の場合には、木村紅美「雪子さんの足音」を予想します。 ■直木賞 澤田瞳子『火定』 ※ダブル受賞はな…

【芥川賞直木賞予想 #158-4】前田司郎「愛が挟み撃ち」

前田司郎「愛が挟み撃ち」(「文學界」2017年月号所収)、読了。 俊介と京子は結婚6年目。それぞれ40歳、36歳とそろそろ中年の域に差しかかろうという年齢だが、俊介は子どもを欲しがっていた。 検査の結果、原因は俊介にあり、しかも治療の余地はなくこのま…

真情溢るる新聞コラム(その2)

昨日のつづき 朝日新聞の「名物コラム」(「名コラム」ではない)の歴史と問題点については、日垣隆『エースを出せ!』(文春文庫)を、そして深代惇郎の「天声人語」が持っている「コラムの矜恃」については、坪内祐三『考える人』(新潮文庫)を、手にして…

真情溢るる新聞コラム

深代惇郎『深代惇郎の天声人語』(朝日文庫)を、ふとパラパラとめくる。 朝日新聞といえば一面の連載コラム「天声人語」。 「天声人語」といえば朝日新聞。地方の一高校生だったぼくが意識しはじめたのは、大学入試を意識したあたりのことだったか、もう忘…

【芥川賞直木賞予想 #158-2】木村紅美「雪子さんの足音」

木村紅美「雪子さんの足音」(「群像」2017年9月号所収)、読了。 社会人中堅の主人公・薫は、上京して目にした新聞で、昔の知り合いである「川島雪子」の訃報を知ることになる。 彼女は大学生のころに住んでいたアパート「月光荘」の大家さんだった。 2階が…

第158回芥川賞直木賞の候補作を読んでいく

ここ数年、わたしの1月は芥川賞直木賞候補作を読むところからはじまる。いや年末からとっくにはじまっているのだが。 このミスも本の雑誌年間ベストも、年末年始にはとても読んでいるヒマはございません。 というわけで、1/15までは両賞の候補作をちびりちび…

星野道夫のドキュメンタリで思い出す、彼の声彼の佇まい

赤座林です。子どもたちの夏休みが通常運転へ。また慌ただしく過ごす朝晩がはじまりました。 日々の慌ただしさを「面倒くさいなあ」と思う傍らで、ふと録画していたNHKドキュメンタリ「星野道夫 没後20年“旅をする本”の物語」を観ましたが、わたしが過ごし…

第157回芥川賞直木賞を予想します!

大仏ダンジョーです。 いよいよ7/19今晩、芥川賞直木賞の銓衡会が開かれて、両賞が決定します。 わたしは、次のように予想してみました。 http://web635.jp/blog/201707192/ ■芥川賞 今村夏子『星の子』 ※ダブル受賞の場合には、沼田真佑『影裏』を合わせて…

【芥川賞直木賞予想 #157-5】市川真人「四時過ぎの船」を読んでみた

市川真人「四時過ぎの船」(「新潮」2017.6月号)、読了。 前回の芥川賞候補作になった「縫わんばならん」に続いてのノミネート。筆力はあろうと思われるのだが、わたしにとって前作は読み切れなかったくらい退屈なものだった。 その〈苦痛〉の記憶が後を引…

【芥川賞直木賞予想 #157-4】沼田真佑「影裏」を読んでみた

沼田真佑「影裏」(「文學界」2017年5月号)、読了。この作品は第122回文學界新人賞でもある。新人賞から芥川賞候補になった作品は珍しいことでもない。 主人公の今野は仕事の異動で、守岡へと移り住んだ。彼には同僚の日浅がいて、お互いに釣り仲間でもある…

「終わらない人」じゃなく、「終われない人」宮崎駿

赤座林です。今日6/25は、「住宅デー」。アントニオ・ガウディの誕生日だそうで。 NHKスペシャル「終わらない人 宮崎駿」のDVDを観ました。去年晩秋に放送したものに、未公開映像を加えたBSスペシャル版が、DVDとなったんですね。その放映を観られなかったの…

【芥川賞直木賞予想 #157-2】今村夏子『星の子』を読んでみた

今村夏子『星の子』(朝日新聞社出版)、読了。これが今回の候補作読みの初回なので、この作品を基準にしていく。 主人公・林ちひろは、幼いころから病弱で、そのことがきっかけで両親は新興宗教へと傾倒する。 長じてちひろ自身は健康になったが、両親は怪…

明智小五郎をはじめて読んでみる ~面白い小説を見つけるために #4

赤座林です。 今日6/21は、夏至。北半球では、一年で昼(日の出から日没までの時間)が長い1日。ああ、一年も半分来たなあという感じがします。 さて、なかなか江戸川乱歩から離れられないのですが、今回でいったん最後にします。 前前回・・・「回想の江戸…

【芥川賞直木賞予想 #157-1】第157回 芥川賞直木賞の当落予想をはじめます

赤座林です。 恒例の芥川賞直木賞銓衡。迎えて第157回目です。 本日6/20その候補作が出揃いました。 【芥川賞】 ・今村夏子「星の子」(小説トリッパー春季号) ・温又柔(おんゆうじゅう)「真ん中の子どもたち」(すばる4月号) ・沼田真佑「影裏(えいり…

文鳥文庫 ~その新しいスタイルの文庫から新しい〈声〉を発したい

赤座林です。今日は地元の商店街で市が立つので、天気がもてばいいなと思っていたが、午後から沛然と雨粒が落ちてきた。 今日6/18は、「海外移住の日」。ブラジル移民第1団が、この日彼の地に着いた。1908年のことで、これはメーテルリンクが『青い鳥』を発…

第157回芥川賞直木賞の候補作を読んでいく

赤座林です。今日6/16は、和菓子の日、麦とろの日だそうです。後者は「麦とろの会」という団体が制定したとか。麦ご飯、わりと美味しいですよね。たまに食べたくなります。白米に混ぜて炊いてもまた美味しいですよね。 さて、たまたまTwitterを眺めていたら…

フルスイング主義で行こう ~『「週刊文春」編集長の仕事術』(2)

新谷学『「週刊文春」編集長の仕事術』の目次の抜き書きを、つづける。けれどこの抜き書きはあくまでわたしが面白いと感じた箇所だけであり、すべての目次(内容)を抜き出しているわけではありません。 4章「組織/統率」 1.一対一の人間関係、信頼関係を現…

回想の江戸川乱歩(2) ~面白い小説を見つけるために #3

小林信彦『回想の江戸川乱歩』(光文社文庫)の話を続ける(Amazonリンクではなぜか文春文庫版しかヒットしない。わたしは光文社文庫版が手元にあるけれど、もう絶版ということかしら)。 この本には「半巨人の肖像」という中編が収められている。 主人公は…

「加計文書」をざっくり読んでみた

さるみのこと赤座林です。 最新版のKindleが届いた日、目下の国会で審議(?)されている「加計学園問題」に関する「文書」が、Amazonから電子配信されるというので、さっそくダウンロードしてみました。 この「加計学園問題」というのは、ざっくりまとめます…

回想の江戸川乱歩(1) ~面白い小説を見つけるために #2

さて、先日、読書会が終わった後の懇親会でのこと。参加者の方たちと、小学生のときには何を読んでいたかという話に、たまたまなった。 参加者は、みなさん30代、わたしより10歳は若い。口から出てきたのは、やはりというか、ドイルと乱歩だった。ルパンの名…

新しいKindleFireHD8が届いた日に「加計学園文書」ダウンロードしてみました!

さるみのこと赤座林です。 今日、最新版Kindle Fire HD8が届きました。わたしは16GBを購入しています。 Kindleを買ったのはほんと久しぶりで、持っているのは初期のタイプ。メルカリでも売れますかね。 そのKindleは現在キャンペーン中で「Fire 7とFire HD 8…

AIの現在と可能性 ~『人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか?』

山本一成『人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか?』、読了。 先日、『情報の歴史』にAIの記述を見つけたことを話したのだが、それから20年たって、人工知能は将棋、囲碁で人間を超えるようになった。 本書は、コンピュータ将棋ソフト・ポナンザの…

ジュブナイルの思い出 ~面白い小説を見つけるために

さるみのこと赤座林です。 さて、先週の日曜日のこと。 本棚を漁っていたら、こんな一文に出くわした。 僕が最初に本を詠み始めた時、といっても絵本類の段階を抜きにして考えると、小学校入学の少し前からだったと思う。最初は、他の誰もがそうであるように…