新谷学『「週刊文春」編集長の仕事術』の目次の抜き書きを、つづける。けれどこの抜き書きはあくまでわたしが面白いと感じた箇所だけであり、すべての目次(内容)を抜き出しているわけではありません。
4章「組織/統率」
1.一対一の人間関係、信頼関係を現場の記者と結ぶ
2.一緒に働きたい人間に目配せをしておく・・・大きな仕事は決して自分一人ではできない
3.嘘をつかない。弱い者苛めをしない。仕事から逃げない・・・間違った小さい嘘を前提にいろんなことを判断していると、いずれ大きな失敗につながる
4.ブレーキをかけるのもリーダーの仕事・・・リーダーが大局的に状況を見た上で、「撤収」を命じなければならない。私にとっての目標は「週刊文春としての勝利」であり「現場に好かれること」ではない
5.すぐに「攻められる」チームを作っておく・・・「このネタは大きくなる」と直感したときに、間髪を入れずに記者を次々に投入できるかが、分かれ目
6.モチベーションを高める「仕組み」を作れ・・・取材チームは、原稿の書き手となる「カキ」と、カキをサポートする「アシ」で構成される。その際のルールは「ネタを出した記者が必ず『カキ』を担当すること」だ
7.厳格な指揮命令系統と柔軟なチーム編成・・・指先まで神経が行き届いた指揮命令系統が週刊文春の生命線である。指揮命令系統を遵守し、手柄を立てた人間をフェアに評価する一方で、ルールを破ることは絶対に許されない
8.「健全な競争」と「共同作業」のバランス・・・自分がいいネタを取って勝負するときにまわりにサポートしてもらいたいなら、自分がサポートに回っても全力で「カキ」を支えなければならない
9.とにかく明るい編集長・・・明るいと言えば、週刊文春の元編集長の花田紀凱さんである(これ、よーく解ります:引用者註)
10.編集長は「いること」に意味がある・・・ちょっとした相談をしようかというときに「あの人いつもいるよね」と思ってもらうことが大切
11.異論・反論がリーダーを鍛える・・・最悪なのは「俺こうやろうと思う」と言って企画を提示したら、みんながシーンとなり、右から左へそのまま通ってしまう組織だ
12.リーダーが厳に慎むべきは、部下からの報告に「そんなことは知っている。俺の方が詳しい」と張り合うことである。さらにリーダー失格といえるのが、部下の悪口を外部に向かって言いまくることだ
13.「フェア」こそがヒットを出し続ける秘訣・・・ネタに対してもフェア、人に対してもフェア、仕事に対してもフェアでないといけない。「自分だって来週はヒーローになれるかもしれない」と思うからみんな頑張れるのだ
14.リーダーシップの根源は「信頼」である
15.迷っている部下とは生き方についてじっくり語れ
16.リーダーの首は差し出すためにある
5章「決断/覚悟」
1.「とにかくスクープ」の姿勢を崩さない・・・人間に「知りたい」という好奇心がある以上はスクープには圧倒的な価値がある
2.「論よりファクト」で勝負する・・・ファクトの前では謙虚であれ
3.過激にして愛嬌あり・・・宮武外骨の言葉。「この人は偉そうなことを言っているけれど、こんな一面もありますよ」と意外な素顔を見せることは大切。週刊誌はリスクを恐れず攻めるメディアだが、怖がられて引かれてはダメ
4.文春には「右」も「左」もない
5.報じられた側の気持ちを忘れない・・・週刊誌はクラスで人気のあるいじめっ子でなければダメ
6.作られた「虚像」よりも「人間」が見たい
7.編集長が判断を下すときの三要素・・・正当性、合理性、リアリズム
8.いくら殴られようが倒れるつもりはない・・・権力、発信力、影響力を持った人にとって都合の悪い部分に斬り込み、勝負を挑んでいくメディアがどんどん減っている。
9.「ことなかれ」ではなく「ことあれかし」・・・「週刊誌とは生体解剖である」(松本清張)
6章「戦略/本質」
1.メディアの「外見」の議論が多すぎる・・・転換期、激動の時代こそ、物事はシンプルに考えるべきだ。週刊文春のいちばん武器は何か。週刊文春が生みだす価値あるコンテンツは何か。ほかが真似できない、お金を払うに足るコンテンツとは何か。そう考えれば自ずと答えは出る。あとは、オリジナルの必殺技を磨き上げ、雑誌の「幹」を太くしていくことに注力すべきだ。コンテンツの流通革命によって本質が見えづらくなっているが、いちばん大切なのは、そのコンテンツが「本当におもしろいかどうか」だ
2.強いコンテンツがあれば主導権を握ることができる
3.敬意を払ってもらえる「ブランド」になる・・・スクープを獲るためには「手間、暇、お金」がかかっていることを理解していただき、それに対する対価を払うことへの抵抗感を払拭したい
4.ビジネスは対極と組んだほうがおもしろい・・・組む相手を選ぶ際、重要な条件が2つある。ひとつは相手が「熱」を持っていること。もうひとつの条件が自分たちと対極にある相手を選ぶことだ。
最後に
ずいぶんたくさん引用してしまった。反則じゃないかとも思う。けれど、久しぶりに元気がでる本に出会えたと感じています。雑誌の勢いがすべて詰まっている。
新谷編集長が言っていることは、とてもシンプル。ごちゃごちゃしていない。
S/N比の高い一冊でした。