慶應鶏肋録

お気楽極楽勉強道楽。慶應義塾大学通信教育課程 法学部乙類学生(71期秋期)の卒業目指すジャーナル。

【平昌五輪】チラ見観戦記 #7 ~当マイクロフォンは

■2月16日(金) 大会8日目

羽生結弦選手が〈復活〉した―。

webはもとより各紙はそう表現した、圧巻のフィギュアスケート男子ショートプログラムの演技だった。

羽生選手の演技を実況していたアナウンサーもまた彼の〈復活〉を目にしていたひとりだ。実況を担当していたのはNHK鳥海貴樹アナウンサー

羽生結弦が戦いの場に戻ってきました」と演技が始まる前には冷静に実況していたが、最初のジャンプである4回転サルコウが見事成功すると、彼の実況に熱がはいりはじめる。

羽生選手は4回転トーループ+トリプルトーループを決めると、鳥海アナは、 「完璧だー!」 とヒートアップ。

演技が終わると、 「帰ってきました。強い羽生が戻ってきました」 「なんという精神力、なんという高い技術。羽生結弦がパワーアップして帰ってきました」とはっきりと興奮して言った。

「やはり彼は王者でした。異次元の強さです」

そしてその後、彼は思わず(といっていいだろう)、こう呟く。

「これだけ完璧な演技が・・・。本当に彼は2ヶ月間、氷の上に乗れなかったのでしょうか。信じられません」

アナウンサーは、実況、目の前で起きた出来事を正確に冷静に伝えなければならない。 けれど、そこは人間ですもんね。主観がどうしても入るし、アナウンサー自身の感情が出てしまうこともある。 実況という〈無名性〉を超えて彼の感情が発露したときに、戦う選手と(TVの前も含めて)観客との〈ブリッジ〉になりうる。

アナウンサーという〈無名性〉で思い出すのは、NHKアナウンサーだった故中西龍である。彼はラジオでアナウンスするときには「私は」ではなく「当マイクロフォンは」と言った。しかし、その語り口調と名調子ゆえに、彼は〈無名性〉を超えて、一個人としての「当マイクロフォン」になった。

2/17、羽生結弦選手のフリーの演技が行われる。その実況も鳥海貴樹アナウンサーだ。