あれ、この本、しばらく前ににを楽しんで読んだ記憶がありますが、もう新刊とは呼べないはずなんだけど。
ジブリの仕事術関連の本は、だいたいぼくの好みですね。波長が合うというか、ぼくが欲しているというか・・・この本自体は、わたしなんかよりもっともっと若い人が読むべきだと思いますが。
さて。著者自身が書いていますが、ここで伝えたいのは、ひとつだけだそうです。
・自分なんてどこにもいない ・自分の中にはなにもない ・何かあるとしたら、それは外、つまりは他人の中である
つか3つじゃん、というツッコミはさておき、著者がカバン持ちをした、ジブリのプロデューサー鈴木敏夫さんからの教わった仕事術はひとつ、
自分を捨てて他人の真似をする
というんですね。
若いころは突っ張って、自己主張も強くプライドも高く、往々にして周りを見ずに仕事をする。著者もその一人だったようですが、そんな彼に鈴木さんはこう言い放ちます。
・自分の意見を捨てろ ・常にペンとノートを持ち歩き、その場で、起きたこと、相手の身振り手振りや場の雰囲気も含めてすべて書き残せ(そして寝る前に必ず整理すること。寝る前にというのが肝心)
そしてこれから3年間、おれの真似をしなさい。自分の意見を捨てて、くもりなき眼で世界を見ること。それを3年間続けてどうしても真似できないと思ったところがきみの個性になる、と鈴木さんは付け加えます。
この話を読みながら、ふと思い出したのは、ノンフィクション作家・故海老沢泰久さんのエッセイです。残念ながら細部は忘れました。
海老沢さんもまた、若いころは自意識過剰でプライドが高く、それを自分でうまく処理できずに苦しんでいました。
ふとしたきっかけで、彼は築地市場で「軽子」とよばれる物運搬を業とする人足としてアルバイトをすることになりました(いま軽子という仕事があるかどうかは不明です)。
朝から晩までひたすら肉体労働をし、帰宅すればそのまま倒れるように寝るだけ。人付き合いもほとんどないし、寄り道もできない。ただ仕事に打ち込む生活があるだけです。
それを3ヶ月ほどつづけて辞めた後、海老沢さんは自分のなかのある変化に驚きます。
自分のなかにあって、あれほど自分を苦しめ周りを困惑させた「自分へのこだわり」とかプライドとか自意識とかが、いっさいなくなっていたことに。
エッセイはたしかそこで終わっていたように思いますし、新聞の短めの文章だったと思います。このエッセイをなぜだかぼくは覚えていますが、きっとそのときの自分も海老沢さんと同じような心境にあったのでしょう。
身体は「殻」という言葉から派生したようですが、本来は空っぽの「殻」にオノレ自身がみっしりと詰まっています。そのオノレが自分を苦しめる。だから自分を「殻=空(から)」にしてみる。
そうなった「殻」には、オノレではない違ったものが入り込んできます。
それを受け入れてみる。
その入り込んできたものは、オノレではない別なものので、すべてが自分にフィットするわけではありません。
そのなかで、自分のなかに残るものだけを、「必要なもの」だと判断し、なじまなかったものはきっぱりと捨てる。
そうすることで、新しく前進することができるというのです。
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