慶應鶏肋録

お気楽極楽勉強道楽。慶應義塾大学通信教育課程 法学部乙類学生(71期秋期)の卒業目指すジャーナル。

【本】山口瞳「冬の公園」

3連休中日。昨日のピリピリした寒さは抜けたけれど、朝から冷たい風が強く吹いていた。立春を越えて、午後の日差しは少し力強さを増してきているようだけれど、北風の冷たさを追いやるまででは到底ない。寒風の中子どもと遊んでいると、冬の陽は、あっという間に落ちていく。

冬の公園は空いている。
空気が澄んでいる。
暖かい日の冬の公園はいい。すこしぐらい寒い日でもいい。木の葉がすくないから、すきとおって見える。遠くまで見渡せる。乾燥しているから、音がひびく。静かだ。落ち葉がないから径も固くかわいている。陽射しが薄いから森が美しく見える。

週刊新潮に、昭和38年12月から平成7年8月まで、31年間と9ヶ月、1614回に亘って、作家山口瞳はエッセイ「男性自身」を連載した。
「公園は、冬のほうがいい。」ではじまる、「冬の公園」と題されたこの話は、その一編である。話は、いつかその公園で出会った一組の夫妻が離婚した話に展開していく。
その夫たる人が、まるで子供のように公園のゴーカートに夢中になって6回も乗り、その度に夫人が手を叩いて喜んでいた光景を、ちょっと異常ではなかったかと結ぶ。
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冬の一日を無造作に切り取った、何の結論があるわけでもない、このエッセイが好きだ。いや、「男性自身」ならなんでもいい。気分が落ちこんだときなどには、本棚から山口瞳を取り出して、あっちこっちを読んでいく。
読んだからといって気分が晴れることはないけれど、ひとつひとつ読み終わるたびに、肺の空気が入れ替わる気がする。
去年は、山口瞳を本棚から取り出す回数が多かったように思う。年々その回数は増していっているように感じるけれど、単にそう思い込んでいるだけかもしれない。

息子は夜になっても、ずっとはしゃいでいた。
ぼくは山口瞳を本棚に戻すと、「さあ寝よう」と彼に言った。

山口瞳「男性自身」傑作選 中年篇 (新潮文庫)

山口瞳「男性自身」傑作選 中年篇 (新潮文庫)