「ゴジラ」シリーズ第9作目は、『怪獣総進撃』。1968年公開。
この作品での観客動員数は258万人。初期「ゴジラ」の観客動員数961万人に比べると約1/3まで減っている*1。子どもたちの関心も怪獣から妖怪、スポ根ものといったテレビ番組へと向けられはじめ、怪獣ブームにも陰りが見えはじめていた*2。
登場怪獣数は昭和ゴジラ映画では最も多く、ゴジラ、ミニラ、ラドン、モスラ(幼虫)、アンギラス、バラン、バラゴン、ゴロザウルス、マンダ、クモンガ、キングギドラの11体である(あまりに多くて紹介しきれません)。
怪獣総進撃(1972年 改題・再上映版予告編) - YouTube
怪獣ランドで管理されている
時代は20世紀末である。国連の科学委員会は硫黄島に宇宙空港を作るかたわら、小笠原諸島周辺に海底牧場を建設し、島では地球上の怪獣を集めた「怪獣ランド」を建設、人類の脅威と なっていた怪獣を1カ所に集めて管理していた。
しかし怪獣ランドに、突然謎の毒ガスが充満、その直後島にいるはずの怪獣たちが世界の主要都市に出現して暴れはじめる。ラドンはモスクワ、モスラは北京、マンダはロンドン、ゴロザウルスはパリ、ゴジラはニューヨークに襲いかかる。
原因調査のため、科学委員会は月探査ロケットムーンライトSY-3号の山辺らに怪獣ランドの調査を依頼。島に到着した山辺らは、怪獣ランドのスタッフたちによって怪獣がリモートコントロールされていることを知り、さらに彼らスタッフを操っているのがキラアク星人という宇宙人と知る。そして彼らの恐るべき地球侵略計画が明らかとなる。
反撃を試みる科学委員会は、月面にあるキラアク星人の基地を破壊し、怪獣たちをリモートコントロールから解放、自分たちの配下に収めることに成功する。
富士山麓に隠されたキラアク星人の前線基地を撃滅すべく、集められた怪獣たち。しかし、そのまえに宇宙怪獣キングギドラが立ちはだかる。
とはいえ、1対10では、いかなキングギドラとも多勢に無勢、たちまちフルボッコにされて、ついに息の根を止められる。
嗚呼、キングギドラここに死す!
これをリンチといわずしてなんと言う
本編のクライマックスは、キングギドラvs地球怪獣軍団の戦いである。
しかしキングギドラにまったくいいところなく、ゴロザウルスにはドロップキックを喰らうわ、アンギラスに噛みつかれるわ、ラドンにはヒットアンドアウェイを受けるわ、モスラとクモンガの糸攻撃をされるわ、まあ宇宙最強といわれた怪獣はフルボッコにされる。
トドメに、ミニラのなんちゃって火炎輪を首根っこにくらって、ジエンドである。この怪獣リンチ劇は、なんとも酷い。この映画最大の見どころであり、最大の欠点であるともいえる。キングギドラも災難である。キラアク星人に呼び出された揚げ句に、ボッコボコにされるんだから。
映画では10体もの怪獣が大暴れするものの、主役は完全に人間になっている(最後の勝利も人間が勝ち取る)。
もはや怪獣は添え物ていどでしかなく、ラストシーンでも再び人間の管理下に置かれてしまっている。
かつて「得体の知れないもの」として登場してきた怪獣たちは、いつのまにか存在自体もはや人類の脅威ではなくなっている。初期ゴジラからここまでの変遷についていろんな解釈ができそうだが、観ている方はそういう気すら起こらない。
ああ、キングギドラの憤死こそ怨め。
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*1:シリーズ第3作『キングコング対ゴジラ』で、当時の歴代邦画観客動員数第2位の記録となる1255万人を動員した。
*2:東宝では本作を以って莫大な製作費を要する怪獣映画の終了を見込んでいたが、予想外の興行成績を上げたことにより、東宝の怪獣路線は継続されることとなった