滋賀の友人Mさんが、「東京国際ブックフェア」で立花隆の講演を聴いてきたというので、こっそりその話を伺った。
※動画付
「元年は何度も来たが、いつまでも二年が来ない」と冷笑される電子書籍だが、とうとう”二年目”がくるかもしれない・・・らしい。
大型書店って、どこにある?
電子書籍興隆の兆しが見える一方で、「スマートフォンなどの携帯端末で手軽に情報収集できるようになり、本を読まない人が社会にあふれている。書店の使い方が分からない学生が多くて驚いた」と立花さんは話す。
若い人が本を読まないという記事はあちこちにある。
○本を読まない大学生、初めて4割超す…生協調査
大学生の4割が全く本を読まないことが全国大学生活協同組合連合会(東京)の生活実態調査でわかった。調査は大学生協連が昨年10~11月、全国30の国公私立大学で実施し、大学生8930人の回答があった。
1日の読書時間(電子書籍も含む)を尋ねたところ、平均26・9分。全く本を読まない「0分」と回答したのは40・5%だった。
同様の調査を行っている2004年以降で読書時間は最も短く、「読書ゼロ」は初めて4割を超えた。また、毎月の書籍費は1790円で、04年と比べると680円減少している。
大学生協連では「スマートフォンの普及で情報が気軽に得られるようになり、娯楽や教養としての読書の優先順位が下がっている。書籍費は節約の対象にもなっている」と話している。(読売新聞 2014年2月26日付)
読まないどころか、書店自体のことをよく知らない学生も増えているというから驚く。
立花さんが、立教大学の学生に「大型書店に行って40分間居続けて、そのレポートを提出せよ」と課題を出した。
約半分の学生のレポートは評価に値したが、残り半分は呆れかえるしかなかったそうだ。本屋で何をしていいのか解らない、40分は長い。そもそも書店さえ見つけられない学生もいたという。
池袋ならリブロもあるし、なんと言ってもジュンク堂本店があるだろう。
若者が本を読まないというのは日本だけの現象ではなく、世界中でそういう傾向にあるらしい。
立教大学の図書館のサイトには、「読書ナビ<おすすめの10冊>」なんてのがあって、親切なんだけどねえ。
http://library.rikkyo.ac.jp/learning/books/
紙の本が持つ優位性
それから、紙の本と電子書籍の優劣の話。
人は何のために本を読むのかといえば、「情報欲求」と「エンタメ欲求」の2つの欲求のためである。欲求するのは脳であるが、脳はコンピュータではないので単にデータを入れれば事足りるということではない。
電子書籍での読書は、紙のそれの読書とは違い、ユーザーの考えたい欲求、感じたい欲求を必ずしも満たしてくれはしない。
そのことは、『本は死なない』ジェイソン・マーコスキー著(Amazon-kindle開発者)を読んで見るとよく解る。kindle開発者自身がそう言っているのだという。こちらはさっそくポチったので、後日チェックしよう。
本は死なない Amazonキンドル開発者が語る「読書の未来」
- 作者: ジェイソン・マーコスキー
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紙の本には、電子書籍に収まらない大きさ、スケールがあり、コピィ不能な質感、クオリアがある。人間の認識という本質部分に訴えるという点で、電子書籍はまだまだ発展途上にある。
幻の日本初電子書籍端末
じつはkindleよりまえに、日本初の電子書籍端末が世界を席巻していたかもしれない可能性があつたという。ソニーやパナソニックが電子書籍リーダーを開発していたのだが、ビデオと同じくその方式が不統一だった。
なんとかパナソニックは中国進出を果たして、中国政府幹部にも食い込み、一時は中国全土の学生の教科書を電子書籍化する計画が実現する手前までいっていたそうだ。
立花さんは講演の時に、ユング『The Red Book』を紹介。『The Red Book』というのは、ユングが全ページ自筆で書いたという日記で、しかも文字や絵までカラーにして記入しているという、どでかい本なのである。
その『The Red Book』は英語版でお値段は4万円、日本語版なら5万以上するという。じつは日本版でも今夏普及版がでるというので、思わずポチリ。
- 作者: C・G・ユング,河合俊雄,ソヌ・シャムダサーニ,田中康裕,高月玲子,猪股剛
- 出版社/メーカー: 創元社
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